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歴史に命を吹き込む:ルーシーと第442連隊戦闘団の物語

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絵本『The Story of Lucy(ルーシーの物語)』は、一見、元気いっぱいの子犬ルーシーが、第442連隊戦闘団の衛生兵たちの愛すべきマスコットになるという、心温まる子ども向けのストーリーです。しかし、その背後には、第二次世界大戦中に戦った日系アメリカ人兵士たちの不屈の精神、忠誠心、そして揺るぎない信念を描いた、深く感動的な物語が隠されています。

こちらの記事では、ルーシーの生みの親であり、映画製作と歴史研究を通じて第100歩兵大隊および第442連隊戦闘団の記録保存に尽力するステイシー・ハヤシ氏、そしてディズニーやハンナ・バーベラ・プロダクション、ワーナーブラザースでの活躍歴を持つ著名なアニメーター、ウィリー・イトウ氏による歴史の旅をご紹介します。

著者のステイシー・ハヤシ氏と挿絵のウィリー・イトウ氏について

著者:ステイシー・ハヤシ氏
ハワイ出身で日系四世のハヤシ氏は、地元の語り部として知られています。歴史家であり、第
100歩兵大隊、442連隊戦闘団、陸軍情報部に所属した日系アメリカ人兵士の専門家(American of Japanese Ancestry:AJA)として、長年にわたり彼らの話を聞き、映像や書籍、地域活動を通じてその功績を次世代に伝えてきました。

彼女の代表作には、マンガ形式で彼らの犠牲と功績を描いた『Journey of Heroes』や、映画『Go For Broke: An Origin Story』があります。ルーシーという実在の子犬の存在を知った彼女は、「この物語は語り継がれるべきだ」と強く感じました。

 

挿絵:ウィリー・イトウ氏
サンフランシスコの日本人街で育ったイトウ氏は、
1941年12月7日、わずか8歳で強制収容所(ユタ州トパーズ)に送られ、そこでデパート「シアーズ」のカタログを使ってパラパラ漫画を描くなど創作を続けました。

その後、19歳でウォルト・ディズニーに入社し、映画『わんわん物語』のスパゲッティのキスシーンを手がけ、以降『スクービー・ドゥー』『宇宙家族ジェットソン』『ほえよ!0011(Hong Kong Phooey)』などの名作にも携わりました。ディズニーへ復帰後はテレビアニメや消費者製品部門でも活躍し、1999年に引退しました。

 

 

『The Story of Lucy』の背景

1944年夏、激戦地イタリアにて、戦傷者の手当てで疲弊しきった第442連隊の衛生兵たちは、偶然にも子犬の兄弟たちを発見します。地元の子どもたちとキャンディを交換して一匹の子犬を譲り受け、子犬が生まれた場所がルチアナだったことから「ルーシー」と名付けて連隊のマスコットに迎え入れました。

戦争の恐怖に取り囲まれ、戦いに疲れ果てた衛生兵たちは、希望と回復力の象徴となったルーシーに慰めと安らぎを見出しました。兵士たちはスポイトでミルクを与え、ドッグタグを作り、どこへ行くにもルーシーを連れて行きました。彼女はただのペットではなく、故郷や平和、戦禍の中でも失われなかった優しさの象徴だったのです。

この物語が発見されたのは、ハヤシ氏が親しくしていた第442連隊I中隊の退役兵、エディ・ヤマサキ氏のアルバムの中に、数多くのルーシーの写真が散りばめられていたことがきっかけでした。ルーシーと楽しそうにポーズをとる衛生兵たちの写真、ルーシーを中心とした集合写真、子犬から大人になり、子犬を産むまでのさまざまな成長段階にあるルーシーの写真を見て、彼女はすぐに、この小さな犬が兵士たちにとってどれほど大切な存在であり、彼らの心の支えになっていたかを悟りました。彼女はルーシーの物語に命を吹き込まなければならないと感じましたが、つい最近『Journey of Heroes』を出版したばかりで、彼女のイラストレーターはまだ壮大で感動的なシーンを描くことから立ち直っておらず、ルーシーを描くことを拒んだのです。

そのため、ルーシーの物語は、コロナウィルスの大流行が明るい兆しをもたらすまで、さらに11年間、語られることなく放置されてしまいました。

 

 

ルーシーとセントラル パシフィック バンクの絆

セントラル パシフィック バンク(CPB)は70年以上前に、第100歩兵大隊および第442連隊戦闘団の日系退役軍人たちによって設立されました。彼らは、戦争から高位の勲章を授与された兵士として帰国したものの、故郷のハワイでは依然として差別を受けていました。多くの銀行が彼らに融資を拒否したため、彼らは自分たちで銀行を設立したのです。

CPBの設立メンバーには、第100大隊の退役軍人でCPBの初代会長を務めたタカハシ・サカエと、第442連隊戦闘団の退役軍人で議会名誉勲章受章者であり、現代のハワイの形成に貢献したダニエル・イノウエ元上院議員がいました。タカハシとイノウエは、ハヤシ氏のマンガ『Journey of Heroes』でも描かれており、マンガに掲載されたイノウエ元上院議員の支援の手紙は、2012年に死去する直前に書いた最後の手紙の一つです。マンガの出版から数週間後のことでした。これらの男性たちは、戦場だけでなく、戦後も差別と闘いながら、経済的な平等とチャンスを求めて活動し続けました。

 

ハヤシ氏は、歴史的なつながりについて次のように語っています。

「日系退役軍人たちは戦争で勲章を授与され、英雄として故郷に帰還しましたが、それでもなお、銀行から融資を受けることができませんでした。どういうことでしょう? だからこそ、彼らは団結して現状を変えることに決めたのです。それが、CPBを設立した理由です。」

 

ルーシーの物語が忍耐力の象徴であるのと同じように、CPBの歴史は、第100歩兵大隊/第442連隊戦闘団の復元力、そしてハワイに残した不朽の影響力の証なのです。

もっとも、ハヤシ氏にとってCPBとの関係は、単なる歴史的つながりにとどまりません。彼女にとって、それは常に個人的なものでもありました。CPBは単なる銀行ではなかったのです。彼らは友人であり、支援者であり、協力者でした。ハヤシ氏が開催する退役軍人イベントにCPBの従業員がボランティアとして参加し、彼女の映画ではエキストラも務めました。彼女は特に、CPBのマイク・マスダの存在を高く評価しています。ハヤシ氏がマイクと出会ったのは、数年前に、第100歩兵大隊退役兵クラブ(Club 100)で退役軍人たちへのボランティア活動をしていたときだといいます。

 

「退役軍人たちと共に、また彼らのためにこうしたプロジェクトに取り組んでいると、本当に多くの人と出会い、さまざまなタイプの人々と仕事をすることになります。マイクはかけがえのない存在です。彼はアイデアの宝庫で、私たちが人手を必要としていたときには、(CPBの)スタッフたちを見事にまとめ上げてくれました。彼は本当に心から気にかけてくれる人です……。現在のような取引中心の世の中では、そういう人は非常に稀です。お金では得られない、まさに理想的なバンカーです。」

 

そして、CPBが退役軍人たちによって創設されたことから、退役兵クラブがクラブや支部の銀行口座をCPBに開設するのはごく自然な流れでした。彼らが晩年に運転をやめるようになると、ハヤシ氏が事務的なサポートを依頼されることもありました。

 

「Club 100のAble支部、つまりA中隊には、チェック(小切手)の発行や入金のために、運転ができる若い会計係が必要でした。それで、彼らは私を署名権のある口座使用者に追加したのです。そして、口座番号が印字された彼らのチェックを見たとき、『これは、CPBで開設された57番目の口座で、その口座のチェックに私が署名しているんだ』と気づいて、なんだかすごく感動しました。銀行の設立に関わった退役軍人たちのための口座ですから。すごいことですよね。」

 

ハヤシ氏の手がけた、第100大隊/第442連隊/MIS(陸軍情報部)の退役兵たちを描いたドキュメンタリー映画は高く評価され、賞にも輝きました。その映画の制作資金は、すべてCPB内の「第442連隊戦闘団基金(442nd RCT Foundation)」の口座で管理され、保管されていました。彼女はこう語ります。

「もちろん、私の人生のライフワークの題材の中に、CPBの創設者の何人かが含まれているので、私はある意味バイアスがかかっているかもしれません。でも、これは特別なことです。アメリカ軍の歴史の中で最も多くの勲章を受けた部隊が、自分たちのため、そして私のような人のために設立した銀行なんて、他にありません。唯一それがCPBなんです。」

 

子犬のルーシー自身にも、CPBとの個人的なつながりがあります。彼女の主な撮影者であった、442連隊I中隊の退役軍人エディ・ヤマサキは、かつてCPBに勤務していました。彼は、I中隊の退役兵たちがハウウラにあるビーチハウスをリースするための融資を承認したこともありました。そのビーチハウスは、ハワイ州内やアメリカ本土から集まるアイテム支部(Item Chapter)の退役兵とその家族の再会の場として、たくさんの楽しいひとときを提供しました。

1944年10月、ヴォージュ山脈でナチスに包囲され絶望的な状況にあったテキサスのロスト・バタリオン(失われた大隊)を、第100/第442部隊が救出したという有名なエピソードを知る人なら、彼らの中で最初に救出にたどり着いたのがI中隊であったことも、ご存じでしょう。

 

 

現代におけるルーシーの意義

『The Story of Lucy』は単なる絵本ではありません。若い世代や愛犬家の大人たちに向けて、重要な歴史をわかりやすく伝える教育ツールでもあります。

ハヤシ氏は、マンガ『Journey of Heroes』では「ちびキャラ」と呼ばれる可愛らしいスタイルを採用し、若年層への親しみやすさを追求しました。ルーシーでは、ディズニーやハンナ・バーベラの伝統を汲んだイトウ氏の懐かしさを感じさせるタッチが、大人の読者にも響くように工夫されています。

また、これはハワイの実在の人物、今は亡き英雄たちについての重要な物語でもあります。例えば、終戦後にルーシーをハワイに連れ帰ったのは、ハワイ出身のハワード・コズマ氏であり、実際のルーシーと彼女を愛した衛生兵たちの写真が巻末に掲載されています。

 

 

『The Story of Lucy』を支援するには

ルーシーの物語をより深く知り、この物語を次世代に伝えたいという方は、公式ウェブサイト 442lucydog.com にて絵本を購入することができます。ルーシーの物語を読み、共有することは、本を買うだけでなく、この遺産を守る手助けをすることになるのです。

また、第100/442連隊戦闘団についてもっと知りたい方は、歴史的事実に基づいたマンガ『Journey of Heroes』を442comicbook.com/shop.html にてご購入いただけます。

 

ステイシー・ハヤシ氏とウィリー・イトウ氏によるインタビュー動画では、第二次世界大戦中の過酷な時代に、兵士たちに希望を与えた小さな犬ルーシーの感動的な物語をご覧いただけます。

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